育児負担を軽くする切り札として、あるいは災害時対策として、液体ミルクの有益性を感じる人は多いです。
粉ミルクやキューブミルクのように、お湯で溶かして調乳する必要がないので、
- 「疲れてても眠くても手軽に使える!」
- 「育児負担が少ない!」
その通りですね。
うまく使えばとても便利で、育児負担を軽くしてくれる切り札になり得る液体ミルクですが、「うまく使えば」というところがミソです。
安全に、混乱を少なく、じょうずに液体ミルクを使うには、どういったことに気を付ければいいのか、紐解いていきます。
液体ミルクのメリット
メリット①:常温で保存できる
液体ミルクは冷蔵庫などで補完する必要がなく、常温での保存が可能です。
外出・旅行する際や、災害時には、常温で保存できるのはかなり心強い機能ですね。
メリット②:お湯がいらない
サカザキ菌等から赤ちゃんを守るために、粉ミルクやキューブミルクは70℃以上のお湯で調乳する必要がありますが、液体ミルクは調乳済みなので、お湯で溶かす手間がいりません。
メリット③: 流水で冷まさなくていい
70℃以上の熱いお湯で調乳する必要がないため、哺乳瓶等の外側から流水をあてて人肌まで温度を下げる必要がありません。
おなかが空いて赤ちゃんが泣いてるときに、それから眠くて疲れてどうしようもないときに、時間をかけてミルクを冷ますのは言葉では表しきれない大変さがありますから、大きなメリットです。
メリット④:常温でそのまま飲ませてもいい
液体ミルクは、パックや缶を開封して、常温でそのまま赤ちゃんに飲ませても大丈夫です。
育児負担が大きい場合や、お湯が手に入りにくい災害時に役立つ特徴ですね。
メリット⑤: アタッチメントを使えば、哺乳瓶すら不要
液体ミルクの販売開始当初は、各メーカーとも哺乳瓶等に移してから飲ませることが必要でしたが、現在は、缶・パックに直接取り付けることのできる、人工乳首=アタッチメントが流通しています。
2021年2月現在は、グリコと明治がアタッチメントを製造*しています。
アタッチメント乳首は洗浄しなければいけませんが、哺乳瓶に移しかえる手間がなく、洗浄するものが1つ減ります。
*明治のアタッチメントは、「母乳実感」の乳首と連結して使用するパーツのみで、乳首自体は含まれません。 (「母乳実感」の乳首を自分で用意する必要があります)
液体ミルクのデメリット
デメリット①: 値段が高い
粉ミルクの缶と比較すると、ざっくり4倍程度のお値段で、液体ミルクはやはり高価です。
日常使いは躊躇うご家庭も多いです。
デメリット②: 1缶の量が多くても残りを取っておけないので、コスパが下がる
液体ミルクは「125ml~240ml/缶・パック」と、新生児や混合栄養児には比較的量が多いですが、今回の授乳では使わなかった分は、次回分として取っておくことができません。
衛生管理のため、例え赤ちゃんが口を付けていなかったとしても、開封後の飲み残し分は破棄しなければいけない旨が、各社ホープページに記載されています。
高価な液体ミルクなので余すことなく大事に使いたいところではありますが、意外と破棄量が多くなるケースがあり、コストパフォーマンスがさらに落ちてしまいます。
デメリット③: 混合栄養の場合、ミルク補足量が多いと母乳分泌が減る可能性が高い
デメリット②「残りを取っておけない」ために、多くの人の心理としては、
「もったいないから、今飲めるだけ飲んどいて!」
となると思います。
ところが、いつも以上に/必要以上にミルクを飲ませてしまうと、混合栄養の場合には母乳分泌が減っていってしまう可能性が高く、場合によっては混合栄養を続けることができなくなります。
母乳は、「乳房から出た分だけ新しく作る」というシステムの元で生産されています。
ですから、赤ちゃんが通常以上に/必要以上にミルクを飲むと、
→当然の結果として授乳間隔が開き、
→授乳頻度が少なくなるので、
→乳房から排出される母乳量が少なくなり、
→生産される母乳量も減ってしまう、
という結果になるわけなんですね。
もちろん、お母さん自身が「それでもいい」と考えていらっしゃるのなら、そのような液体ミルクの使い方もアリだと思いますが、「混合栄養(母乳育児)を継続したい」と考えている場合には、母乳分泌が減ってしまって困るというケースもあります。
デメリット④:混合栄養の場合、ミルク補足量が多いと乳腺炎などのトラブルを引き起こすことがある
デメリット③では母乳分泌が減ってしまう可能性についてご説明しましたが、いつも以上に/必要以上にミルクを補足して、授乳間隔が開くということは、
「いつもなら・本来であれば、出ていくハズの母乳が乳房内にうっ滞してしまう」
ということでもあります。
…ので、乳房に痛みのあるしこりができたり、乳腺炎に発展してしまうことがあるのです。
負担を軽くしたくて使ったはずの液体ミルクだったのに、かえって苦痛や負担が増えてしまう…ということがあるんですね。
デメリット⑤:使用可能期間が短い
店頭に並んでいる粉ミルク等は、賞味期限が1年~1.5年あるものがほとんどですが、液体ミルクは「製造日より6ヶ月~14ヶ月」です。
災害時対策としてストックする場合は特に、期限切れに注意する必要があります。
デメリット⑥:夏の保管が難しい
液体ミルクのメリットに「常温で保存できる」ということがあり、例えばメーカーはこのように表記しています。
高温・凍結を避け常温で保存してください。
直射日光のあたるところ、火のそば、夏場の車の中などをさけて保存してください。
https://www.meiji.co.jp/baby/hohoemi/rakurakumilk/
常温で保存可能ですが、風味や色味をより良く保つためには室温(20℃前後)に置いていただくことをお勧めします。
https://www.meiji.co.jp/baby/hohoemi/rakurakumilk/?utm_source=googlelisting&utm_medium=cpc&utm_campaign=mr2
安全性という意味では、極端に高熱にならなければ真夏も風通しの良い場所で室温で保管できますが、風味を損なわないためには20℃前後での保管を勧めているんですね。
風味が多少変わっても気にせず飲んでくれる赤ちゃんばかりではないので念のため注意が必要ですが、「20℃前後」を維持するのはけっこうハードルが高いです。
デメリット⑦:かさばる・重い
液体ミルクは、当然のことながら水分に溶解した状態の商品なので、重くて場所もとります。
特に災害時対策として液体ミルクをストックする場合、先述したように、赤ちゃんの哺乳量に関わらず1回の授乳で1缶(1パック)必要なので、少なくとも8缶(パック)/日が必要です。
液体ミルクは保存可能期間が短いために避難場所に十分な備蓄がないこともあり、日常的にミルクを使っているご家庭の場合は、 5~7日分程度は自前で準備をしておいた方が安心です。
つまり、最大量で計算すると
8缶×7日分=56缶!
保管する場所の確保も大変ですが、重くてかさばるために、非常時に安全に持ち出すのが難しいという側面が実はあります。
デメリット⑧: 赤ちゃんがイヤがる可能性
普段は粉ミルクやキューブミルクを使っていて、「外出時・旅行時や災害時だけ液体ミルクで」という選択をされるご家庭も多いと思います。
言うまでもなく赤ちゃんにも個性がありますから、味覚が敏感な子の場合には「いつもと違う味のミルク!」ということで飲んでくれないこともあるんですね。
液体ミルクを安全に・じょうずに使うためにはどうしたらいい?
以上のメリット・デメリットを踏まえて、どうしたら安全にじょうずに使うことができるかポイントをまとめます。
- 一度開封したら、1回の授乳で使う。残った分は取っておかずに破棄する。
- トラブル防止のため、赤ちゃんがいつも飲む量のミルクor今の赤ちゃんに必要な量だけのミルクにする。
- 保存可能期間に注意して、期限が切れていないがチェックする。
特にパックの液体ミルクは、保存可能期間が短いので注意が必要! - 風味を損なって赤ちゃんの授乳拒否を防ぐため、真夏もできるだけ20℃以下の涼しい環境で保管する。
- 災害時対策のミルク備蓄は、液体ミルクだけでなく、粉/キューブミルクも併せて準備した方が現実的かもしれない。
(避難する時には、粉/キューブミルクを持って、避難所でお湯をもらうことも選択肢に) - ごく稀にしか液体ミルクを使わない場合には、普段のミルク補足の場面で、時々液体ミルクを使っておくと赤ちゃんの授乳拒否がなくて済むかもしれない。
オンライン両親学級や個別相談を開催しています。
液体ミルクのメリット・デメリットから、安全に・じょうずに使うためにはどうしたらいいかについて考えました。
どんな方法で赤ちゃんを育てるか決める際の参考にしていただければ幸いです。
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