添い乳は危険なの?やらない方がいい?
前回の記事では、より安全でラクチンな添い乳のやり方をお伝えしてきましたが、繰り返し事故のリスクについても触れていますので、
「じゃあ、添い乳はやらない方がいいんじゃないの?」
と感じた方がいても不思議ではないと思います。
添い寝・添い乳をしないように提言している国もある
実際に、アメリカ・カナダ・ドイツなどは、赤ちゃんとベッドを共有しないように助言しています。
つまり、「添い寝も添い乳もやらないで!」というメッセージを発信しているわけですね。
また、日本でも、添い乳中の赤ちゃんの死亡事故を受けて、「添い乳を避けるべき」といった主旨のニュースが報道されることがあります。
添い寝・添い乳のリスクや注意点について、話し合いを提唱している国もある
一方で、イギリスやオーストラリアでは、「ベッドの共有が危険になるような特定の状況について率直に話し合うように」と保健医療従事者に助言しています。
つまり、「添い寝や添い乳は絶対ダメ!」としているのではなくて、「添い寝・添い乳をやらない方がいい状況や注意点について、きちんと話し合っておきましょう」と、現実的な生活では添い寝・添い乳をすることがあるのを前提に考えた提言がされているわけです。
じゃあ、私たちは添い乳をどのように考えたらいいの?
確かに、「添い乳中に赤ちゃんが窒息するリスクをゼロにする」という単一の視点だけで考えれば、添い乳を禁止するのはまっとうな選択のように思えます。
ところが、1つの要素のゼロリスクを追い求めると、他の場所でのリスクが増加することがあるのです。
もし、日本でも「添い乳は禁止!」にしたとして、例えば、どんなリスクが新たに生じるか考えてみます。
- お母さんはいつも起き上がって授乳しなければならず、お母さんの心身の健康を害するリスク:
「添い寝・添い乳をしているお母さんの方が、しないお母さんより長く睡眠をとれる」と報告されています - 座位での授乳中にお母さんが眠ってしまって、赤ちゃんが転落する/お母さんの胸で窒息させるリスク
- 母乳育児率が低下するリスク:
「添い寝・添い乳によって夜間の母乳育児を促進する」と、複数の研究が明らかにしています。
また、母乳育児は乳幼児突然死症候群のリスクを少なくすることが知られています。 - 保健医療従事者は立場上、すべての親子に対して「添い乳はおすすめしません」としか言えず、「もし添い乳するならどのようなことに注意すればいいか?」「どういう場合には添い乳はしない方がいいのか?」という話し合い自体ができなくなるリスク
- ③の結果として、「こっそりと」「自己流で」不適切な添い乳する人が増えることによる事故のリスク
どれも、「ありそう」なリスクだと思いませんか?
もし仮に「添い乳中に赤ちゃんが事故で亡くなる」という事故がなくすことができたとしても、添い乳ができないことでお母さんの心身の健康を害してしまったり、添い乳以外の場面で事故が増えたりしたら(例:椅子に座っての授乳中に、お母さんがウトウトして赤ちゃんを転落させてしまう)、添い乳の禁止にはあまり意味がないと私は思います。
大切なのは、赤ちゃんと一緒に暮らすお母さんとご家族が、
- 添い乳をしない方がいい条件について知る機会を持つ
- もし添い乳する場合には、具体的にどのようなことに気を付ければいいか、知る機会を持つ
ことなのではないでしょうか。
添い乳を禁止する方がアドバイスとしては単純で、簡単ですが、先述したように様々な新たなリスクをはらんでしまって、それでは母子にとってのメリットには繋がらないと思います。
添い乳を禁止することは、「お母さん、睡眠時間を削って授乳してくださいね」と、お母さんお一人だけに負担を強いることに繋がってしまうのではないかと危惧します。
個別相談をお受けします
添い乳をしない方がいい条件、添い乳の際のコツ・注意点についてはこちらの記事で解説していますが、「我が家の場合はどうしたらいいの?」という場合には個別相談をご利用くださいね。
個別相談には、➀訪問相談(地域は限る)、②ビデオ通話/音声通話相談、③LINEチャット相談があります。