シリーズ3回目のお話です。1回目・2回目のお話も併せてお読みくださいね。
母乳では不足する栄養素って?
赤ちゃんを母乳だけで育てていると不足する可能性のある栄養素として、以下の3つがあります。
- ビタミンD
- ビタミンK
- 鉄分
今回は③の鉄分について解説しますね。
いつから鉄不足に気を付ければいい?
正期産(妊娠37週~)で健康に生まれた赤ちゃんの場合、最初の6ヵ月は母乳だけで必要な鉄量が得られます。
この理由は2つあります。
- 赤ちゃんは「貯蔵鉄」を持っているから(胎児期にお母さんからもらった鉄)
- 母乳中に含まれる鉄分は少ないが、吸収率がいいから
(母乳中に含まれる鉄量は人工乳の約1/10だが、吸収率は約20%で、人工乳の約5倍の吸収率)
だから、正期産で健康に生まれてきた赤ちゃんの場合は、鉄不足に気を付けないといけないのは「生後6ヵ月ころ~」と言えるわけなんですね。
(早産で生まれた赤ちゃんについては当てはまらないので、鉄の補足についてどのように考えればいいか、かかりつけ医にご相談くださいね)
「母乳中の鉄分を増やすために、お母さんが鉄剤を飲めばいいんじゃない?」
と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、お母さんが鉄剤を内服しても、母乳中の鉄濃度は増加しないことが分かっています。
また、お母さんに貧血があっても、母乳で育てることで赤ちゃんの貧血リスクが高まることはない、ということも分かっています。
鉄分が不足すると何が心配?
鉄欠乏性貧血の代表的な症状としては、顔色が悪い、疲れやすい、息切れする、どきどきする、注意力・集中力の低下、持久力の低下などがありますが、乳幼児では気づかれないことも多く、また中長期的な影響な影響も懸念されますので注意が必要です。
鉄欠乏の状態が続いてしまうと、子どもの成長、発達、特に最近では乳幼児の知能の発達に大きく影響することがあると言われています。
鉄分不足をどう補う?
だから、胎児期に蓄えた貯蔵鉄では足りなくなる、生後6ヵ月頃からの補足が重要なのですね。
生後6ヵ月というと、ちょうど補完食/離乳食が始まるころですので、食事から鉄分が補えるように意識していく必要があります。
鉄分を豊富に含む食材は、以下の通りです。
- ヘム鉄(吸収率が良い)
レバー、赤身肉、赤身の魚など - 非ヘム鉄(吸収率が悪いが、動物性たんぱく質やビタミンCと一緒に摂取することで吸収率アップ)
卵黄、納豆、小松菜など
これをお読みいただくと、
「え…!離乳食の初期は10倍粥だし、最初に与えるタンパク質は白身魚でしょ?」
とビックリされる方もいらっしゃると思います。
実は、離乳食のガイドラインには「10倍粥からスタート」とは書いてないです。
そのへんについては過去に記事にしていますので、併せてお読みくださいね。
また、「タンパク質は白身魚から」とよく指導されるますが、白身魚からスタートしないといけない科学的な根拠は特にありませんし、先述したように生後6か月頃から貯蔵鉄が不足し始めることを考えると、補完食/離乳食開始直後から、鉄分を豊富に含む食材を赤ちゃんに与えてあげた方がベターと言えます。
- 赤ちゃんにとってどの栄養が、どれくらい不足するのか?
- 足りない栄養素をどのように「補完」してあげればいいか?
という「補完食」の考え方については、WHO(世界保健機関)がパンフレットを作成していて、日本語訳がネット上で読めますので、こちらもぜひ読んでみてくださいね。
補完食/離乳食をあまり食べてくれない時はどうしたらいいの?
生後6ヵ月からは胎児期に蓄えた貯蔵鉄もなくなるし、母乳中に含まれる鉄分だけでは到底、不足分を補うことができませんから、お食事から補うことが必要ですよ、というお話をしてきました。
そうすると、補完食/離乳食をあまり食べてくれない母乳育ちの赤ちゃんの場合は、鉄の供給源がないので困ってしまいますね。
先述したように、乳幼児の鉄欠乏は気づかれないことも多いので、
「母乳育ちで」「補完食/離乳食をあまり食べない」
状態でご心配であれば、かかりつけの小児科で相談されるとよいと思います。
医師が必要と判断すると、検査(採血)→鉄剤処方となることもあります。
個別相談をお受けします
こうして記事にできるのは、あくまで一般論なので、「我が家の場合はどうしたらいいの?」「離乳食の進め方が分からない」「食べてくれなくて困る…」という時はご相談くださいね。
個別相談には、➀訪問相談(地域は限る)、②ビデオ通話/音声通話相談、③LINEチャット相談があります。
赤ちゃんの「飲む」「食べる」を中心に、妊娠期~産後まで幅広くご相談をお受けしています。